躍動するイメージ。

【ART REVIEW】 今日は東京都写真美術館で開催中の「躍動するイメージ。石田尚志とアブストラクト・アニメーションの源流」をご紹介します。アニメーション誕生当時の古典的映像装置から現代日本の映像作家・石田尚志の新旧作まで、抽象アニメーションの歴史…

2009年、音楽回想。

あけましておめでとうございます。ついに2010年突入ですね。響きが未来世界だ…と思ってしまうのは私だけでしょうか?(笑)昨年末になりますが、人生で初めて「その年に聴いた音楽を振り返る」ということをしてみました。iTunesのプレイリスト機能を使って2009…

かいじゅうたちのいるところ

【BOOK REVIEW】 モーリス・センダック『かいじゅうたちのいるところ』神宮輝夫訳(1975年,冨山房)こんにちは。皆さんはよいクリスマスを過ごしましたか?私はというとまさかのインフルエンザに倒れ、とても切ないクリスマスでした…。まだまだ流行っているよ…

“かぎりなく死に近い生”

写真:2009年3月,マケドニアの肉屋にて撮影。 「死」とは一体何なのでしょう。私は最近、専らそのことについて考えています。どんな生物であっても、生きている限りいつか必ず死は訪れます。考えてみれば全く当たり前のことなのに、合理性と快適さに囲まれた…

犬養道子『人間の大地』

【BOOK REVIEW】 犬養道子『人間の大地』(1983年,中央公論社)少し前になりますが、11月20日は「世界こどもの日」でした。この日は今からちょうど20年前、国連総会で「子どもの権利条約」が採択された日にあたります。私は「世界こどもの日」のニュースきっか…

動物写真家・星野道夫

【BOOK REVIEW】 『星野道夫の仕事(全4巻)』(1998年、朝日新聞社)大都会の片隅のとある図書館。何気なく表紙をめくった途端、私の目の前には、茫漠としたアラスカの大自然が広がりました。人一人いない広大な大地。厳かに聳え立つ巨大な山々。純白の雪原を走…

ブリキのおまるにまたがりて

【BOOK REVIEW】 長新太『ブリキのおまるにまたがりて』(1974年初版/2008年復刻,河出書房新社)こんにちは。最近めっきり寒くなってきましたね。先日とあるお店で「トウガラシ成分・カプサイシン加工の手袋!」とやらを見かけました。確かに暖かそうではあり…

ミツバチのささやき

【MOVIE REVIEW】 『ミツバチのささやき』(ビクトル・エリセ、1973年) 先日、早稲田松竹にてスペインの監督ビクトル・エリセの映画を見ました。『ミツバチのささやき』は、一篇の長い抒情詩のような映画です。いつだって「子ども」という存在が抱えるもろく…

レヴィ=ストロース追悼

先月の30日、「構造主義の祖」といわれるフランスの人類学者クロード・レヴィ=ストロースが亡くなった。100歳だったという。レヴィ=ストロースの構造主義は、各社会において人間を本質的に支配している無意識の「構造」を明らかにした。個人を支える価値とい…

愛しい想像力!

“想像力”―それは誰もが持つ魔法のような力。我々は多くの場合、周りに存在する多種多様な事物(目に見えないものも含む)を当たり前のように受け入れ、まるでそれが当然であるかのように、何食わぬ顔で、現実生活を営んでいる。お気に入りの映画や音楽、小説et…

チェコアニメ傑作選

【MOVIE REVIEW】 現在、東京・新宿のK's cinema:title=K's cinema]にて「チェコアニメ傑作選」が上映中です(11月6日まで)。このブログでも度々取り上げてきたチェコという国は、言わずと知れたアニメ大国。カレル・ゼマン、イジー・トルンカ、ヤン・シュヴァ…

ひかりのまち

【MOVIE REVIEW】 『ひかりのまち』(マイケル・ウィンターボトム監督、1999年)スタッフのリーサさんにおすすめされて観た、マイケル・ウィンターボトム監督の『ひかりのまち』。作品の原題は「WONDERLAND」ですが、「ひかりのまち」という邦題が素敵だと思い…

『おんなのことあめ』

ミレナ・ルケショバー/ヤン・クドゥラーチェク『おんなのことあめ』(1977年、ほるぷ出版)この間たまたま入ったブック・カフェで、完璧な絵本に出会いました。チェコの人気絵本作家ミレナ・ルケショバーと画家ヤン・クドゥラーチェクの合作絵本『おんなのこと…

『Children of Nature』

【MOVIE REVIEW】 『Children of Nature』(Fridrik Thor Fridriksson監督、1991年)先週から何だかしつこいですが、今度はアイスランドの映画作品をご紹介します。レイキャビクの老人ホームで数十年ぶりに再会した幼馴染の男女2人が、「最期のときを故郷で迎…

múmの音楽

【MUSIC REVIEW】 こんにちは。東京はすっかり秋めいてきました。そろそろ冬服を出さなくてはいけませんね。先日、TAICOCLUBという野外イベントで、múmの演奏を聴きました。múmは2人のコアメンバーを中心としながら様々な形態で新しい音楽を作り続けているア…

フィッツジェラルド『若者はみな悲しい』

【BOOK REVIEW】 F.スコット・フィッツジェラルド『若者はみな悲しい』小川高義訳(2008年、光文社)今年の春頃から、フィッツジェラルド(1896〜1940)に夢中です。色々と濫読した中で、特に印象深い自選短編集をご紹介します。フィッツジェラルドは1920年代の…

善き人のためのソナタ

【MOVIE REVIEW】 『善き人のためのソナタ』(監督フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク,2006年)舞台はベルリンの壁が崩壊する5年前の東ドイツ。強固な共産主義体制下にあって芸術家からあらゆる自由が剥奪されていた時代である。命の危険を侵しな…

寺山修司編著『日本童謡詩集』

【BOOK REVIEW】 寺山修司編著/宇野亜喜良装丁『日本童謡詩集』(1992年、立風書房)以前、スウェーデンの童謡集についてレビューを書いたことがありますが、今日は一風変わった日本の童謡集を取り上げたいと思います。寺山修司が編著を担当した本書『日本童謡…

アワー・ミュージック

『アワー・ミュージック』(監督ジャン=リュック・ゴダール,2004年)現代の世界は、自分の不幸を嘆きたがる側とその嘆きを毎日聞くことで自分の心を慰め優越感を感じる側に分かれる。ヒントのような短い言葉の連続の中から、我々が我々自身の力によって思想を…

Cibelle

【MUSIC REVIEW】 ブラジル、サン・パウロ出身の現代音楽家Cibelle。伝統的なブラジル音楽やボサノバとエレクトロニカを混ぜ合わせたユニークな音楽をつくっています。ブラジリアン・エレクトロニカの立役者Subaらのアルバムに参加しています。“GREEN GLASS”(2…

高木正勝-Bloomy Girls

【ART REVIEW】 高木正勝『BLOOMY GIRLS』(2006年、ブルーマーク)現在、東京都現代美術館のコレクション展にて、メディアアーティスト高木正勝の映像作品《Bloomy Girls》(2005年)が展示されています。会場に足を踏み入れたとき目の前に現れたのは、私がいつ…

Rufus Wainwright

【MUSIC REVIEW】 Rufus Wainwright『RUFUS WAINWRIGHT』,1998例えば三ヶ月に一度、ひとりぼっちで夜を眺める。時計の針が午前一時を回った頃、私は無性に彼の音楽に会いたくなる。なぜだかわからないけど。カップの底に溜まった砂糖の塊のような―もしも彼の…

ネコはどうしてわがままか

【BOOK REVIEW】 日高敏隆『ネコはどうしてわがままか』(平成20年、新潮社)動物だって、すねるし、きどるし、ときどき落ち込んだりもする。動物行動学の第一人者である著者が書いたこの本を読んで、私はまさに目から鱗の落ちる思いをしました。北アメリカの…

出会いというもの

このところ、人と人の出会いというものについてしみじみ考えています。有難いことに、この2年間はPP BOOKSTOREのお客様・スタッフを始め、私生活でも本当に多くの良き出会いに恵まれました。先日、故郷である新潟に帰省しました。いつだって田舎と都会の往来…

小川未明童話集

【BOOK REVIEW】 小川未明『小川未明童話集』(昭和26年初版,新潮社)児童文学の金字塔とも言われる作家、小川未明。『赤いろうそくと人魚』を読んだことがある方は多いかもしれませんが、他の作品も面白いです。本書に収められている「月とあざらし」は、凍て…

コーヒーカップに浮かぶ光の輪を眺めながら考えていたこと

例えば自分の表層が、やわらかい泡の粒であったら。息が身体を揺らすごとに、私を縛り付けていたあらゆる意味は、未知なる無意味の内部へ溶け出す。油断すれば、すぐに消えてしまう、波の戯れや、空に浮かぶ巨大なザリガニのような。瞬間という、得体の知れ…

エルサ・ベスコフとスウェーデンの童謡集

【BOOK REVIEW】 Alice Tegner/Annie Petersson/Elsa Beskow『NU SKA VI SJUNGA』(1943,Almqvist&Wiksel)こんにちは、いかがお過ごしですか。桜の花はあっという間に散ってしまって、木々たちはすっかり初夏の装いですね。スウェーデンの古都ルンドの古本屋…

アンドレアス・グルスキー

【ART REVIEW】 アンドレアス・グルスキーの写真が訴えるものは何か。それはこの世界に存在する果てしない同時多発性である、と私は思う。ストックホルムの現代美術館で見たグルスキーは、あまりに力強く、あまりに繊細であった。スーパーの棚に所狭しと並べ…

不思議な世界

【BOOK REVIEW】 山田太一編『不思議な世界』(1993年、筑摩書房)UFO、宇宙人、妖怪、もののけ・・・この世界には人知では計り知れない不思議なものや現象が数多く存在する。程度の差はあれ、きっと誰もが一度はこの世の不思議について考えたり、何らかの形で経…

相互依存について

相互依存相互依存相互依存…重ねて書くと、なんだか怪しい呪文みたいですね。私は最近、この言葉についてよく考えています。グローバル化とは「世界大の相互依存のネットワーク」である−アメリカの国際政治学者ジョセフ・ナイ氏の言葉ですが、うーん、まさに…