ブリキのおまるにまたがりて

【BOOK REVIEW】

長新太『ブリキのおまるにまたがりて』(1974年初版/2008年復刻,河出書房新社)

こんにちは。最近めっきり寒くなってきましたね。先日とあるお店で「トウガラシ成分・カプサイシン加工の手袋!」とやらを見かけました。確かに暖かそうではありますが…もしかして、やっぱり、舐めたら辛いのかしら…?ドキドキ。

さてさて。今日ご紹介するのは、ナンセンス絵本の巨匠・長新太さんのエッセイ…いや、正確に言えばエッセイではないのかもしれません。本書の帯によれば「絵本?+エッセイ?=絵ッセンス?」とのこと。

それもそのはず、この本、ただの本ではありません。見所はまず、冒頭に収載された「おまるのいろいろ」。電車式、ガニマタ用、うずまき型、親指サイズなどなど、一体どこからこんな発想が…!と思ってしまうような色々な形態のおまるを、独特のゆるーいイラストと味わいのある丸文字が描き出します。

ほかにも、物の切断面の恐ろしさと面白さについて綴った「なるほど、ポキン」、へそに住みついた虫人間「へそのごま吉」の話、星の王子さまやジョン・ケネディといった訳の分からぬ人々が訳の分からぬ会話を繰り広げる「座談会はお好き」などなど、随筆と小説と絵本と巨大な妄想がごちゃごちゃに交じり合った奇抜な企画が満載です。

絵本にも言えることですが、彼の作品の最大の魅力はやっぱり“訳がわからない!”というころではないでしょうか。理屈や道徳を超えた極めて自分勝手な人間の妄想というものの面白さを、とても素直に思い出させてくれる。ページをめくった瞬間から読者はもう、迷路のような長新太ワールドの住人です。心が折れそうなときやめげてしまいそうなとき、長さんの絵や文は、いつも心の奥の奥の方にやって来て“生きてていいのだ!”という圧倒的な存在承認を与えてくれるのです。

テキストを書いていたら、絵本を読み返したくなってきました。まだまだ寝れそうにない、秋(冬?)の夜長なのでした。

Text by NANASE