きょうの猫村さん

【BOOK REVIEW】

ほしよりこきょうの猫村さん1-3』(2005年〜/マガジンハウス)

2年ほど前だっただろうか。帰宅途中に何気なく立ち寄った書店で、私は彼女と出会った。彼女というのは猫村さんその人(猫)である。その、いかにも「猫」な姿を一目見た瞬間、私は彼女の虜になった。その日のうちには1巻を読み終え、ひとり「もう、後には戻れないな・・・」と悟った。

ネット上の連載から火がつき今やベストセラーとなった「きょうの猫村さん」。私含め多くの人をこうも魅了する「猫村さん」の魅力とは一体何なのであろうか。私なりに考えてみた。

まず、そのまんまの猫が人間の世界で家政婦をやってしまうという設定のおかしさ。猫村さんは決して人間になりたい猫なのではなく、猫としてのプライドを持って強く生きる猫なのである。特別扱いを嫌い、何事にも一生懸命取り組むし、自分に甘えを許さない。(しかし猫なので時々こたつで寝てしまったりもする)。周りの人たちも、猫村さんのことを当たり前の様に「働く猫」として認める。猫だからといって誰も驚く人はいない。この大前提に、猫村さんの面白さはある。

次にくるのは、猫村さんの心の暖かさである。彼女は自分と関わりのある人たちのことを本当に親身になって考える。それはもうお節介なほどに。所謂“近所のおばちゃん”のような暖かさである。デジタル化・情報化が進展し、直接的なコミュニケーションの衰退や人間関係の希薄化が叫ばれる現代、あんなに情が厚く人間(猫?)味に溢れた猫が他にいるだろうか。(おそらくいない。いや、絶対にいない)。

そしてはずせないのは、題材・設定の奥深さである。“癒し系漫画”としてのイメージが強いために意外と思われる方も居られるかもしれないが、本書の設定・題材には人間社会の抱える重要な諸問題が大きく反映されている。家族、恋愛、友情、仕事etc・・・。猫村さんの周りの人々は、彼女が度々発する純粋な猫ゆえの一言を通して忘れかけていた“何か”を思い出していく・・・(のか?未だ完結していないのでこの先はわかりません)。

色々と真面目に論じてみたが、やはり何といっても猫村さんは可愛い。ひとつひとつの動作から目が離せない。料理も掃除も器用にこなすがたまにおっちょこちょいな所、鼻歌をすぐ歌ってしまう所、急に猫っぽく走り出す所・・・。ずんぐりとした体つきや小さな耳も愛らしい。結局、それが最大の魅力であろうか。

・・・というわけで今日は「きょうの猫村さん」のブックレビューでした。単行本は3巻まで発行されていますが、物語はまだまだ続きます。今後の展開が楽しみですね。

Text By NANASE