蜷川実花展-地上の花、天上の色-

【ART REVIEW】

こんにちは。先日、東京オペラシティ アートギャラリーで開催されている「蜷川実花展-地上の花、天上の色-」を訪れました。本当に素晴らしい展覧会だったので、ご紹介したいと思います。

最初の部屋に入るとまず、白い壁一面に掲げられた巨大でカラフルな「花」の写真たちが観客を迎え入れます。
―溶けていく輪郭、どんどん曖昧になっていく境界線。私が花なのか、花が私なのか。
添えられた言葉が象徴するように、眩いほどの可憐さと透明感に満たされたその空間は、訪れた人全てを心地好く忘れがたい陶酔へと誘います。

展覧会はその後、学生時代のセルフポートレイト、彼女が繰り返しテーマとしてきた「金魚」「旅」「造花」の写真、最新作へと続き、さらに彼女の豊かな想像力と色彩センスをを極限まで生かした「人」の写真で締めくくられます。どの作品もそれぞれがそれぞれとして素晴らしいものでありながら、全体を振り返ったとき、それらが“蜷川実花”というただ一つのストーリーとして浮かび上がってくる。その確かな物語は、展覧会場を去った後でさえ、目を閉じるたびに鮮やかな映像として眼前に蘇るのです。

サブタイトルである“地上の花、天上の色”とは、美術評論家松井みどり氏の言葉。なるほど確かに、彼女の写す花々は地上のものでありながら、まるでこの世のものとは思えない宇宙的な壮大さをもって見る者の心に鮮烈な印象を残します。一目見たら忘れることのできない鮮やかで明快な色彩と、全体に漂う独特で力強い生命力。蜷川実花といえば、ファッション、広告、映画など幅広い分野を横断する今一番の売れっ子写真家ですが、本展を見て彼女の芸術的発展は決してここで終わるものではないと確信しました。今後の活躍を心から楽しみにしています。

展覧会は12月28日(日)まで開催されているので、お時間があればぜひ訪れてみてください。

Text by NANASE