ネコはどうしてわがままか

【BOOK REVIEW】

日高敏隆『ネコはどうしてわがままか』(平成20年、新潮社)

動物だって、すねるし、きどるし、ときどき落ち込んだりもする。動物行動学の第一人者である著者が書いたこの本を読んで、私はまさに目から鱗の落ちる思いをしました。

アメリカの草原に住むセージライチョウという鳥のオスは、繁殖期になるとそれぞれの巨大な気嚢に空気を溜め、それを吐き出すときに出るポン、ポン、という音の大きさを競います。何日間にもわたる闘いの末、1位、2位、3位…といわゆるセージライチョウの“ポン順位”が決まるそうです(勝手に命名)。そしてこの順位はそのままメスからの“モテ順位”となります。ですからポン、が大きければ大きいほど、そのオスはより多くの子孫を残せるというわけです。ポン、が男の誇りなんて、なんだかおかしいですね。

他にも「ドジョウは何を食べている?」「カエルの合唱はのどかなものか?」「カマキリの予知能力」などなど、興味深い内容ばかり。身近な動物たちが、こんなにも色々な事情や秘密を抱えて生きていたとは…!驚きが満載です。

動物の行動や性質を知るということは、同じ動物である私たち人間を知るということでもあります。同様に、私たちの住む地球という星を知るということでもあります。それは多様な発見と神秘に満ちていて、私たちに“生きる”というシンプルな喜びを教えてくれます。本書はごく気軽に読める230ページ程度のエピソード集ですが、私は本を閉じたとき、なんだかとても新鮮な充足感に満たされました。おすすめの一冊です。

Text by NANASE