雨、あめ

【BOOK REVIEW】

ピーター・スピアー『雨、あめ』(1984年/評論社)

こんにちは。東京では桜も満開を迎え、季節はすっかり春ですね。さて、今日ご紹介するのはオランダ出身のイラストレーター、ピーター・スピアーの『雨、あめ』という絵本。

物語は雨の中レインコート姿で元気に遊ぶ姉弟を描いたものですが、この絵本の特徴は言葉が一切使われていないということ。本の始まりから終わりまで全て絵だけで構成されています。字が無い分、ピーター・スピアー独特の滑らかで優しいタッチや柔らかな色彩を存分に楽しむことができます。また、(特に小さなお子さんと読むときなど)自分でセリフを作って読んでみるのも面白いと思います。

私は小さな頃から雨の日が好きです。晴れた日も素敵ですが、雨の日にはまた違った魅力があると思います。あの、もどかしいような、頼りないような何ともいえない空の灰色。冷たくて少ししょっぱい雨の味。静かで優しい雨音のリズム。ぐちゃぐちゃになった公園の砂場。そんなものを思い出すだけで私は今でもわくわくしてしまうのですが、この絵本は1ページめくるたびにそういった“雨の日だけの特別なドキドキ感”を思い出させてくれるのです。また、外で遊んでびしょ濡れになった後姉弟がつかるお風呂や家族で囲むあたたかい食卓は、想像するだけで胸を幸せでいっぱいにしてくれます。

梅雨の季節はまだまだですが、雨が好きな人にも嫌いな人にもぜひ読んでいただきたいおすすめの一冊です。

Text By NANASE