Fischli&Weiss

【ART REVIEW】

こんにちは。今日はアート系映像のDVDを紹介します。
80年代初頭よりスイスにてアート・ユニットとして活動しているPeter FischliとDavid Weissによる、"Fischli&Weiss"の『ゆずれない事(1981)/正しい方向(1983)』です。

これは彼らの初期作品で、作者自らが中年のパンダとネズミに扮したユーモラスなロードムービーです。時に些細なことで喧嘩しながら友情を育む、大まかなストーリーはB級映画のごとく単純明快です。しかし肝心なのは内容よりも、うす汚れた着ぐるみや高級そうな画廊にある美術品などさりげなく挿入された細部の方であると私は感じます。それらは稚拙で幼児的な印象を与え、観客に脱力感を伴う笑いをもたらします。

映像には専門的な技術、知識はほとんど見うけられません。これはFischli&Weiss作品の最大の特徴です。彼らは現代の消費社会や制度・権力など既存のものへの無関心さ、あるいは反発を「取るに足らない」表現物へと変換するひとつの手段を提示しているようにも思えます。とはいえ、現代に潜む矛盾や不条理に対する政治的・社会的な主義主張が映像の中で声高に叫ばれることはありません。何の変哲もない物語が淡々とシニカルに描かれているだけなのです。ハリボテ同様の映画の小道具、陳腐な言い回し、彼らはあくまでも胡散臭さすら与えかねない手法を選択して独自のアナーキズムを貫き続きます。

発見した際にはぜひお手にとってみてください。

Text by AYAKA