「イームズの写真」

【ART】

イームズ、その名前を聞くとあのゆるやかに曲線を描くプラスチック製のシェルチェアを思い出す人が多いでしょう。近年のカフェブームやミッドセンチュリー家具の大流行で、日本にすっかり浸透したイームズのプロダクツ。その偉大なデザイナーの頭の中をのぞくような展覧会に出会いました。

六本木AXISギャラリーの「チャールズ・イームズ写真展」。米国議会図書館所蔵の75万点(!)という膨大な数から、イームズ・スタッフが厳選した100枚の写真が公開されています。日常生活は勿論、仕事場や旅先でもカメラを常に携えていたこと伺えます。家具が床に落とした影、砂利を踏む草履の足元、野に咲く花のクローズアップ、鏡に映った自分と妻レイなど…。切り口はさまざまですが、線や形、色による調和の美、構造美、素材美――イームズが直観した美が印画紙より浮かび上がります。

写真の裏には一緒に彼が人生やデザインに関して語った100の言葉や引用句が書かれています。

「テーブルに食器を並べるたびに、私は何かをデザインしている。」

最も印象深かった言葉。まるで幼いこどもが積み木遊びをしているようです。身の回りのものを並べたり、重ねたりして、新しい形を発見することを純粋に楽しむ。そんなイームズの好奇心に満ちた精神が見え隠れします。彼には写真を撮ることも、同じように何かをデザインをするプロセスだったに違いありません。記録としてではなく、新しいものを生み出すための素材――撮りためられた無数の写真は、きっと創造の刺激的な源泉だったのでしょう。

そう考えながら改めて会場全体を眺めると、写真と言葉が織り成す100枚の写真は、鮮やかなタペストリのように空間に立ち上がり、あの馴染み深い椅子のようにゆるやかに私たちを包んでいるように思えました。

Text by AYAKA