ももいろのきりん

【BOOK REVIEW】

中川李枝子・文/中川宗弥・絵『ももいろのきりん』(1965年/福音館書店)

こんにちは。今日は中川李枝子による童話『ももいろのきりん』をご紹介します。

中川李枝子は『いやいやえん』や『ぐりとぐら』で有名な、戦後日本を代表する絵本作家です。挿絵画家の妹・山脇百合子とコンビを組むことが多いのですが、この『ももいろのきりん』では夫・中川宗弥が絵を担当しています。

物語は、主人公のるるこがお母さんから大きな大きなももいろの色画用紙をもらうところから始まります。あまりに綺麗で大きな色画用紙だったので、るるこはそれで世界一のきりんをつくることにしました。るるこが仕上げにクレヨンで大きな目と口を描くと、世界一のきりん“キリカ”がしゃべりだしました―

るるこは、大好きなキリカのためにうたをうたいます。
キリカはももいろ ももいろといういろは せかい一きれい きれいなるるこちゃんの るるこちゃんのきりん きりんのキリカ キリカはももいろ
私の家にもももいろのきりんがいたら・・・と何度思ったことでしょう。世界一太った背中にまたがって、世界一速いスピードで森の中を走りぬけてみたいものです。

この作品を読んでいると、あらためて“ももいろ”という言葉の美しさに気づかされます。平仮名にしたときの文字の形も何だか丸々としていて可愛らしいし、音にもどこか優しい響きがあります。“ピンク”とはまた違う、日本語独特のつかみどころのない柔らかさや温かみがあって、定義づけることが難しい存在。“ももいろ”と何度もつぶやいてみると、自然と心がわくわくしてきます。考えれば考えるほど、“ももいろ”が愛おしく思えてきます。中川李枝子の作品を読むと、毎回必ずこのような“どうしても愛おしくなってしまう存在”に出会います。彼女の作品が長く愛され続ける理由の一つであるかもしれません。

世界一のももいろのきりんと、おてんば娘るるこの物語。ぜひ、あなただけの“愛おしい存在”を見つけてみてください。
Text by NANASE