Elliott Smith

【MUSIC REVIEW】

Elliott Smith『Figure8』,2000年。
こんにちは。暑い日が続きますね。いよいよ本格的な夏の訪れのようです。

さて、今日ご紹介するのはアメリカのシンガーソングライター、エリオット・スミス。囁くような柔らかな歌声、繊細で優しい旋律。いつ聴いても、彼の音楽は最適な温度で身体全体にしみ込んできます。

エリオット・スミスは、1994年に初のソロアルバムをリリースして以来順調に音楽活動を展開し、2000年には日本のFuji Rock Festivalにも参加しました。しかし、新アルバム製作中の2003年10月、自宅にて自ら命を絶ちます。動機については、生前悩まされていたドラッグやアルコール依存症の影響など諸説あります。

本作『Figure8』は、メジャーデビュー後2作目のアルバム。前作『XO』に比べると僅かながらセンチメンタルな要素は薄まり、より幅広い音楽的挑戦を試みているように思います。しかしながら、独特の悲哀感を湛えたエリオットサウンドは健在です。また、エリオット・スミスの魅力はその詩世界にもあります。抽象的で、散漫で、得体が知れないのだけれど、通り過ぎると再び会いたくなってしまうような。あるいは存在に気づくと同時にしぼんでしまう、夢の世界のような。

現在、メジャーデビュー以前のものも含め6作のアルバムがリリースされているエリオット・スミス。彼の音楽世界が今後も多くの人々に届くことを願っています。

Text by NANASE