加古里子さんの絵本

【BOOK REVIEW】

加古里子『かわ』(1962年/福音館書店)
こんにちは。絵本大好きのななせから、おなじみ絵本レビューをお届けします。

『かわ』は、日本の科学絵本の巨匠とも言うべき絵本作家、加古里子(かこさとし)さんの40歳のときの作品です。著名な絵本作家であると同時に東京大学工学部卒の工学博士でもある加古里子さんは、その専門性や知識を生かし子供のための楽しく分かりやすい科学絵本を数多く発表してきました。直接科学をテーマとしていない作品でも、何かしら興味をそそる工夫があるものが多いです。『だるまちゃんとてんぐちゃん』を始めとする「だるまちゃん」シリーズや『からすのパンやさん』などは大変有名で、知っている方も多いと思います。

今回ご紹介する『かわ』のすごい所は、その“つながり”にあります。山をくだり、田んぼや野、村々を越え、にぎやかな街を通って、ついには大海原へと流れ着く“かわ”の一生が、一冊の本の中で、見事に物語としての連続性を得ています。事実、この絵本を解体して一つに繋げると、一つの長い川が出来上がります。読み終えて本を閉じると、川という当たり前の自然がまるで命を持ったかのように語り掛けてくるのを実感します。

加古さんの才能を見出した福音館書店の名編集者・松居直さんによると、加古さんの絵本の本質は“遊び”にあるそうです。確かに、加古さんの絵本にはよく見るとたくさんの“遊び”が登場します。この『かわ』でも、表紙に何気なく登場する子供達は加古さんの子供達だそうです。加古さんは絵本における小さないたずらや余白の使い方が本当に上手だと思います。ぜひ、一度手にとってそこに秘められたたくさんの“遊び”を見つけてみてください。
Text by NANASE