マザーグースのうたがきこえる

【BOOK REVIEW】

ニコラ・ベーリーマザーグースのうたがきこえる』由良君美訳(1978年/ほるぷ出版)

こんにちは。ずいぶんと寒くなってきましたね。通り抜ける風の匂いに本格的な秋の訪れを感じます。

今日ご紹介するのは、イギリスの女流画家ニコラ・ベーリーによる絵本『マザーグースのうたがきこえる』です。その名の通り、イギリスの口承童謡“マザー・グース”を題材とした絵本で、彼女の絵本界でのデビュー作品です。この“マザー・グース”、イギリスでは“ナースリー・ライムズ”と言うらしいのですが、1921年北原白秋が“まざあ・ぐうす”として紹介して以来、その名で親しまれているとのことです。

遊び、不思議、なぞなぞ、数字、恐怖、皮肉などなど・・・色とりどりの要素がごちゃごちゃに混ぜ合わさったマザー・グースは、まさに“イギリス版わらべうた”といったもの。時代を超えて愛されているのは、それが言葉というものの楽しさをごく純粋に唄っているからでしょう。もちろん、英語による言葉遊びなどは翻訳する過程でその楽しさが損なわれてしまうこともあります。しかし本書の翻訳はそれを日本語の響きによって巧みに表現していますし、巻末に英語の原詩を収載しているので様々な角度からマザー・グースを味わうことが出来ます。

マザー・グースを題材とした絵本や書物は数多くありますが、本書の見所は何といってもニコラ・ベーリーによる挿画の美しさです。細密なタッチ、絶妙な色使い、計算された構図は、絵本としての本書の魅力を最大限に引き出しています。また、細かな描写の中には楽しいユーモアが秘められています。ぜひ1ページ1ページを丁寧にめくり、じっくりと彼女の絵を“読んで”見てください。彼女が施した沢山の遊びに気がつくでしょう。

(本文からの引用)

>ちいちゃなマフェットちゃん しげみにすわっておやつをたべる

そこへおおきなくもがきて よこにすわりこんじゃった

わあたいへんとマフェットちゃん とんでった

>さあさうたおう ネコにヴァイオリン 

うしがつきをとびこした

これみてこいぬがおおわらい

おさらがおさじとにげだした

声に出してみたり、メロディをつけてみたり。マザー・グースならではの不思議な世界を、ぜひ色々な方法で楽しんでみてください。

Text by NANASE