茂田井武展

【ART REVIEW】

こんにちは。今日は練馬区http://www.chihiro.jp/tokyo/で開催されている〈生誕100年 愛と記憶の画家 茂田井武展〉をご紹介します。

茂田井武は、戦中から戦後にかけて絵本や絵雑誌の仕事で活躍した画家です。彼の残した数多くの作品は戦後日本の混乱期を生きる子供たちに大きな夢と希望を与え、日本の児童文学のスタートを支えました。病気のため1956年に48歳という若さでこの世を去ってしまいましたが、彼の芸術は今なお多くの画家や作家、そして今を生きる子供たちに影響を与え続けています。

ボヘミアン」。茂田井の友人たちは、彼の芸術にそんなあだ名をつけたそうです。確かに、彼の絵には確固とした意志や理想があるにも関わらず、緩やかな遊びやユーモアが溢れています。誰にも真似出来そうにない自由奔放さと、純粋さと、温かさに満ちています。茂田井は童画家として活躍する傍ら熱心に童画の勉強を重ね、また自身の子供の成長を丁寧に記録していました。大切な子供のための絵だからこそ、心から納得できるものを残したかったのでしょう。

展示会場には10代の自画像から晩年の絵本まで、画家・茂田井の一生を現す作品が時代ごとに並べられています。もちろん時代や作品ごとに画風は異なるのですが、そこには揺ぎ無き“茂田井武”その人が存在しています。どの作品にも、画家の温かで優しい魂が込められています。特に最晩年の絵本『セロひきのゴーシュ』は、まさに命がけで描かれた作品です。宮沢賢治のゴーシュを描けるなら死んでもいいと、病状を見て挿画の依頼を辞退しようとした編集者を引き止めたといいます。命尽き果てるまで、童画家としての強い信念を貫き通した茂田井武。圧巻です。

本展覧会では約130点の原画と貴重な資料が集められ、画家・茂田井武の世界を多様な視点から展観することができます。11月30日まで開催しているので、機会がありましたらぜひ訪れてみてください。

Text by NANASE