ゆかいなゆうびんやさんのクリスマス

【BOOK REVIEW】

ジャネット&アラン・アルバーグ『ゆかいなゆうびんやさんのクリスマス』佐野洋子訳(1992年、文化出版局)

メリークリスマスイヴ!一年の流れは早いもので、あっという間に年の瀬がやってきましたね。

さて、今日はクリスマスにちなんで仕掛け絵本『ゆかいなゆうびんやさんのクリスマス』をご紹介します。作者はイギリス出身のジャネット&アラン・アルバーグ夫妻で、本書は彼らの代表作である『ゆかいなゆうびんやさん』のクリスマス版です。

いつか ある日 クリスマスイヴ
たくさん雪が ふったあと
また ゆかいな ゆうびんやさんが やってきた。
ゆかいな道を 走ってね
荷物を1つ しょってきた

赤ずきんちゃん、ハンプティ・ダンプティ、しょうがパン坊や、おおかみあなのおおかみ…個性豊かすぎるキャラクターとゆかいなゆうびんやさんの、ゆかいすぎる物語。各ページのポケットには手紙やハガキが入っていて実際に手にとって読むことが出来るのですが、それが実に面白い。ただのクリスマスカードだけではなくて、パズルだったり、すごろくだったり、のぞき絵だったり・・・。特にしょうがパン坊やに届いた「おもちゃまちクリスマス年報」の完成度にはびっくりしてしまいます。手のひらサイズの小さな冊子に、きちんと出版社情報やバーコード、さらに広告ページまで付いていて、いかにも本物らしい。絵本作家としてのジャネット&アラン夫妻の凄い所は、子どもたちがそういった小さくて楽しいユーモアが大好きであることを鋭く理解し、それを(決して手を抜くことなく)細部の細部にまできちんと施していることだと思います。

また、この絵本の魅力はリズミカルな文章にもあります。佐野洋子さんによる翻訳は軽快な歌のようで、大好きなマザーグースの世界を彷彿とさせます。手紙のあて先が「H.ダンプティさま こまどり記念病院ほかほか病棟」だったり「おもちゃまち小指通りビスケット箱 しょうがパン坊やさま」だったりするのも素敵で、ついくすっと笑ってしまいます。

クリスマスの夜にぴったりの絵本だと思います。皆さん、ゆかいなゆうびんやさんと一緒に素晴らしいクリスマスをお過ごしください。

Text by NANASE