相互依存について


相互依存相互依存相互依存…重ねて書くと、なんだか怪しい呪文みたいですね。私は最近、この言葉についてよく考えています。

グローバル化とは「世界大の相互依存のネットワーク」である−アメリカの国際政治学ジョセフ・ナイ氏の言葉ですが、うーん、まさにそうですね。人、物、金、情報など多様な資源が国境を越えて自由に行交う今、“相互依存”というキーワードなくして世界は語れません。様々な要素が互いに何らかの影響を与え合いながら、時に傷つけあい、時に支え合ってこの世界を動かしています。

例えば、私たちの生活に欠かせない衣食住、音楽、文学、芸術といった文化的要素、家族関係、友人関係、恋愛関係などの様々な人間関係…そんな身近なところにも、相互依存は溢れています。毎日事務所で飲む美味しいコーヒーと休息のひと時は、遠くコロンビアやグァテマラのコーヒー農家によって支えられていますし、私たちもまた消費者の一人として彼らを支えています。程度の差はありますが、きっと私と関わりのある何もかもが私に何らかの影響を与えているでしょうし、私もそれらに何らかの影響を与えているのです。

社会契約説を唱えたフランスの啓蒙思想家ジャン=ジャック・ルソーは、各人が完全に自律・孤立した、相互依存関係のない状態を理想と考えました。もちろん産業化・工業化の進んだ近代社会においてその状態を持続することは不可能なので、ルソーはそこから様々な政治思想を考え出すわけですが…。

相互依存のない世界が人間にとって幸せかどうか?それは分かりませんが、とにかく今私にできることは、世界に溢れる相互依存関係をはっきりと自覚し、そしてそのより良いあり方を考えること。そして、私を支えるあらゆるものものに感謝すること。これに尽きると思います。“人は一人では生きていけない”―月並みでつまらない文句ですが、この短い言葉の中には人間にとって最も重要な真理が隠されているのかもしれない。そんな気がするのです。

Text by NANASE