アンドレアス・グルスキー

【ART REVIEW】

アンドレアス・グルスキーの写真が訴えるものは何か。それはこの世界に存在する果てしない同時多発性である、と私は思う。

ストックホルムの現代美術館で見たグルスキーは、あまりに力強く、あまりに繊細であった。スーパーの棚に所狭しと並べられた色とりどりの商品、うず高く積まれた大量の廃棄物、ロックミュージシャンに熱狂する数万人の聴衆、マスゲームの中の少女たち。一つ一つの写真に収められた大量の被写体たちが、まるで代わり映えのしない自信を持って、まるで代わり映えのしない自己主張を繰り返す。それは時々美しく、時々とても恐ろしい。

全てに焦点の合った世界。果てしなく同時多発的な世界。68億の人間が、もしかしたらそれ以上の宇宙人が、全く自然な成り行きで、自分自身を人生の主人公に据えて生きているという事実。それについて考えるとき、私はほとんど目眩がしそうだ。一体どれが本物なのか・・・?答えの出ない問いが、私の頭の中をぐるぐると回り始める。大量消費社会、グローバル経済、相互依存のネットワークの中で、私たちに見つけられる“本物”など、最初からありはしないのではないか。

将来この世界を取り巻く状況がどのように変容したとしても、20世紀から21世紀にかけてのこの時代、アンドレアス・グルスキーという人が人類に問いかけ、そして残したものを、我々は決して忘れないであろう。そして私自身も、いつか必ず再び彼の作品に会いに行きたいと思う。

Text by NANASE