コーヒーカップに浮かぶ光の輪を眺めながら考えていたこと


例えば自分の表層が、やわらかい泡の粒であったら。

息が身体を揺らすごとに、

私を縛り付けていたあらゆる意味は、未知なる無意味の内部へ溶け出す。

油断すれば、すぐに消えてしまう、

波の戯れや、空に浮かぶ巨大なザリガニのような。

瞬間という、得体の知れない時間の塊について考える。

日常の構成物は、一瞬の連続であろうか、本当に?

私は長い間忘れていた瞬間の不在に気づき、身震いする。

思考は動脈を伝って、つま先ではじける。

私は思い出す、やさしいコーヒーの体温を。

Text by NANASE