『Children of Nature』

【MOVIE REVIEW】

『Children of Nature』(Fridrik Thor Fridriksson監督、1991年)

先週から何だかしつこいですが、今度はアイスランドの映画作品をご紹介します。

レイキャビクの老人ホームで数十年ぶりに再会した幼馴染の男女2人が、「最期のときを故郷で迎えたい」との思いから窮屈なホームを抜け出し、遠く離れた辺境の地へと向かう物語です。

アイスランドの驚くほど雄大な自然の情景と、孤独な老人2人。映像の中で不思議なまでに一体化した両者は、とても自然で、とても軽やかです。絶望、憎しみ、不安、諦め、寂しさ、望郷、希望、愛情、喜び、感謝…あらゆる人間的な感情が広大な大地に吸い込まれていく光景に、私自身も吸い込まれてしまいそうでした。映画全体としてものすごく完成度の高い作品とは言えないのですが、そこには忘れがたき純粋な美しさがあります。

人はなぜ生まれ、なぜ生き、老い、死んでいくのでしょうか。人はその死を迎えるとき、何を願うのでしょうか。こんな壮大な問いを堂々と書いてしまうのもちょっと恥ずかしいですが、しかし、これこそ多くの人間が古来より考え続けてきた究極の問いであり、私自身がこれからも人生をかけて考え続けていくであろう重要なテーマです。私はこの映画を見て、この問いが改めて無限で果てしないものに感じられました。答えは、あまりに遠い。私は少しだけ絶望して、少しだけ気が楽になりました。

この映画、日本では1994年に『春にして君を想う』という題で公開されたようなのですが、私にはこの邦題がどうもしっくりこないので、原題で紹介させていただきました。ちなみに挿入曲としてBjorkの前バンド・The Sugarcubesの曲が使われています。

Text by NANASE