『おんなのことあめ』


ミレナ・ルケショバー/ヤン・クドゥラーチェク『おんなのことあめ』(1977年、ほるぷ出版)

この間たまたま入ったブック・カフェで、完璧な絵本に出会いました。チェコの人気絵本作家ミレナ・ルケショバーと画家ヤン・クドゥラーチェクの合作絵本『おんなのことあめ』です。

『おんなのことあめ』は、心優しい女の子と寂しがり屋の雨の物語です。ヤン・クドゥラーチェクの描く淡い色彩が、やわらかで、繊細で、1ページ1ページが宝物のように美しいです。雨の大きくてまんまるい目に、私の心まで見透かされていくよう。全体を通してとても穏やかな絵本ですが、物語には確かな抑揚があります。絵と文が愛おしく溶け合って、新鮮な歓びが心を満たします。

私はレインコートに長靴をはいて、虹色の雨の街を歩き、耳元で囁く小糠雨の優しい声を聴きました。さらさらと空中を舞う細かい水滴たちの、瑞々しい匂いや、皮膚に触る感触を感じました。もう絵本は手元にありませんが、目を閉じると、そのときの情景がはっきりと心に浮かびます。

手にとって表紙を見た瞬間から何か感じるものがありましたが、読み終わった後、感動でしばらく呆然としてしまいました。あまりに美しい絵本体験で、思わず涙が出てしまいました。私はますます、絵本というものが好きになってしまったようです。

現在は絶版で入手困難というこの絵本。もしも図書館や古書店で目にしたら、ぜひ手にとってみてください。

Text by NANASE