チェコアニメ傑作選

【MOVIE REVIEW】

現在、東京・新宿のK's cinema:title=K's cinema]にて「チェコアニメ傑作選」が上映中です(11月6日まで)。

このブログでも度々取り上げてきたチェコという国は、言わずと知れたアニメ大国。カレル・ゼマン、イジートルンカヤン・シュヴァンクマイエルなど、偉大な作家を多数輩出しています。このようなチェコアニメの隆盛には、同国の伝統文化である人形劇の影響があるようです。

なぜ、人形劇なのか?そもそもの起源は、ケルト人の宗教的な儀式にあるといわれています。15,6世紀頃より始まるハプスブルク帝国の支配の中で、人々は公式な場でのチェコ語の使用を禁止されるようになります。その中で唯一チェコ語を使用できる場所が、人形劇や民謡だったのです。その後19世紀末にハプスブルク帝国からの脱却を目指して起こった民族復興運動において、人形劇がチェコの土着文化や母国語の復権を担う鍵として重要視された、という経緯があるようです。

シュヴァンクマイエルも自身の作品に度々「操り人形」を登場させますが、これには彼の創作テーマである「自由と操作」の表象が深く関わっています。目に見えない圧倒的な権力に支配・操作されながらそのことにすら気づくことのない現代の危険な社会構図の中で、人々は自身の内心を守る努力を怠っているのではないか?それが彼の権力論の根幹であると私は理解していますが、作品中に登場するグロテスクな操り人形たちは、彼の目から見た現代社会における「操作性」の象徴なのではないでしょうか。

上映中の「チェコアニメ傑作選」においては、シュヴァンクマイエルをはじめコウツキー、トルンカ、ポヤルなどチェコアニメの巨匠たちの作品を6本立てで観ることができます。それぞれがユニークで、チェコ文化の底力を感じさせる魅力的な作品ばかりです。とりわけコウツキーの「視角の外」(約3分)は必見です!

Text by NANASE