愛しい想像力!


“想像力”―それは誰もが持つ魔法のような力。

我々は多くの場合、周りに存在する多種多様な事物(目に見えないものも含む)を当たり前のように受け入れ、まるでそれが当然であるかのように、何食わぬ顔で、現実生活を営んでいる。

お気に入りの映画や音楽、小説etc…。我々がそれらの包含する何かに惹かれるとしたら、それは我々が自身の想像力をもってそこに何らかの美を感じ取っているからであろう。あるいは芸術家は、多くの場合通り過ぎてしまいがちである世界の事物を自身の視点から捉えなおし、そこへ自己の想像力を投影し、独自の表象へと変換する。様々な要素を自由自在に連結させ、分離させ、人々を新たな世界へと誘う“想像力”は、まさに魔法のようだ。

イギリスの哲学者コリングウッドによれば、芸術活動とは想像力を本源とする活動である。シュルレアリスム運動の第一人者アンドレ・ブルトンは言う。“想像力を隷従に追いこむ事は、たとえ大まかに幸福などとよばれるものがかかわっているばあいでも、自分の奥底に見だされる至高の正義のすべてから目をそらすことに等しい”と。

芸術表現だけではない。想像力の欠如は他者との相互理解を阻み、異文化の共存を不可能なものにする。多様性への視座は我々に様々な新しい可能性を与えてくれるが、相互不理解は無益な戦闘や差別を生み出す。世界をこれ程までに面白いものにした美しき多様性。これを理解するには、柔軟で豊かな想像力が必要不可欠だ。

…という訳で、明日からの一週間を勝手に“想像力週間”と名付けたいと思います。例えば電車の中、あるいはオフィスで街なかで。柔軟で豊かな想像力を鍛えるため、色々なことやものを日々妄想したいと思います。皆さんもおヒマがあればぜひとも一緒に楽しい妄想、もとい、想像に励みませんか!ふふふ。
*参照*岩城見一編集『感性論-認識機械論としての〈美学〉の今日的課題』(1997年、晃洋書房),アンドレブルトンシュルレアリスム宣言/溶ける魚』巌谷國士訳(1999年、岩波書店)

Text by NANASE