くまとやまねこ

【BOOK REVIEW】 湯本香樹実/酒井駒子『くまとやまねこ』(2008年、河出書房新社) ―ある朝、くまはないていました。なかよしのことりが、しんでしまったのです。物語は、こんな悲しい言葉から始まります。くまは、仰向けになったことりの前で呆然と座り込み、…

山本容子さんと「本の話 絵の話」

【BOOK REVIEW】こんにちは。今日は銅版画家山本容子さんによるエッセイ『本の話 絵の話』をご紹介したいと思います。山本さんは銅版画家としてのみならず、絵本、本の装丁、音楽ホールや壁画制作など、幅広い分野で活躍する、いわばマルチアーティスト。私…

愛しのチェブラーシカ

【ANIMATION REVIEW】 もじゃもじゃの毛に、大きな耳、まんまるい目。ぽてぽてとした歩き方に、甘くて子どもっぽい声。一度見たらちょっと忘れられない、正体不明の変てこな生き物。それが、チェブラーシカです。ミカン箱に運ばれて遠い国からやって来た小さ…

パレスチナのこと、サイードの言葉。

まるで終わりの見えない、永遠に続く長い迷路のような。チェコで出会ったキュビズムの螺旋階段は、今日の不安定な中東情勢を象徴しているかのように思えます。昨年末から20日間以上にわたって続いたイスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの攻撃。今、よ…

スズキコージさんのこと

【ART REVIEW】 あけましておめでとうございます。ついに2009年に突入しましたね。100年に1度の経済危機なんかに負けず、楽しく充実した1年にしたいものです。昨年の暮れ、絵本作家スズキコージさんのライブペインティング作品(巨大絵)を見にThe Artcomplex …

恢復の物語としてのCOPELAND

【MUSIC REVIEW】COPELAND[In Motion](2005/アメリカ)他すべてのアルバム ロックという音楽が持つ最大の特質は、それが抵抗の歌(レジスタンスソング)であり得るという点だろう。つねにそうであるわけではないけれど。時に…。ロックという音楽は時に体…

ゆかいなゆうびんやさんのクリスマス

【BOOK REVIEW】 ジャネット&アラン・アルバーグ『ゆかいなゆうびんやさんのクリスマス』佐野洋子訳(1992年、文化出版局)メリークリスマスイヴ!一年の流れは早いもので、あっという間に年の瀬がやってきましたね。さて、今日はクリスマスにちなんで仕掛け絵…

どろんここぶた

【BOOK REVIEW】 アーノルド・ローベル『どろんここぶた』岸田衿子訳(1971年、文化出版局)好きな絵本は数え切れないほどあるけれど、もしも一冊だけ選べと言われたら、きっと私はこの絵本を選びます。第一“どろんここぶた”なんていうちょっとまぬけな名前から…

Psappの音楽

【MUSIC REVIEW】 Psapp『THE ONLY THING I EVER WANTED』,2006年今日はイギリスのエレクトロニック・ポップ・デュオ、Psapp(サップ)をご紹介します。彼らの作り出す音楽は少し変わっていて、使われるのはおもちゃの楽器、ぬいぐるみ、灰皿など個性豊かなガラ…

蜷川実花展-地上の花、天上の色-

【ART REVIEW】 こんにちは。先日、東京オペラシティ アートギャラリーで開催されている「蜷川実花展-地上の花、天上の色-」を訪れました。本当に素晴らしい展覧会だったので、ご紹介したいと思います。最初の部屋に入るとまず、白い壁一面に掲げられた巨大…

送料無料キャンペーンのお知らせ

■送料無料キャンペーンのお知らせ■期間:2008年12月1日(月)〜9日(火) 12月1日(月)〜9日(火)、期間限定「送料無料キャンペーン」を実施します。期間中に商品をお買い上げくださった場合、何冊でも(もちろん1冊でも!)全国送料無料で商品をお届けいた…

The Velvet Underground & Nico

【MUSIC REVIEW】 『The Velvet Underground & Nico』(The Velvet Underground & Nico,1967年)こんにちは。いよいよ本格的な冬の訪れですね。今年の東京の初雪はいつごろでしょうか。今日は、アルバム『The Velvet Underground & Nico』をご紹介します。これ…

きりのなかのはりねずみ

【BOOK REVIEW】 ユーリー・ノルシュテイン/セルゲイ・コズロフ/フランチェスカ・ヤルブーソヴァ『きりのなかのはりねずみ』こじまひろこ訳(2000年、福音館書店)こんにちは。ますます冷え込んできましたね。こたつとみかんが恋しい今日この頃です。さて、今…

踊りたいけど踊れない

【BOOK REVIEW】 寺山修司/宇野亜喜良『踊りたいけど踊れない』(2003年,アートン)>手は勝手に書いていた 足は勝手に踊っていた とりのこされた あたしはひとりぼっち夜になっても眠れない>もんだいは あなたのなかに小さなもうひとりのあなたがいるかどうか…

茂田井武展

【ART REVIEW】 こんにちは。今日は練馬区のhttp://www.chihiro.jp/tokyo/で開催されている〈生誕100年 愛と記憶の画家 茂田井武展〉をご紹介します。茂田井武は、戦中から戦後にかけて絵本や絵雑誌の仕事で活躍した画家です。彼の残した数多くの作品は戦後…

I LOVE HONZI.

【MUSIC REVIEW】 早川義夫・佐久間正英・HONZI『I LOVE HONZI』,2008年先日、吉祥寺で開催された“HONZI LOVE CONNECTION”というライブに行ってきました。昨年の9月に病気で亡くなった鬼才のバイオリニスト・HONZIの追悼ライブで、出演者はフィッシュマンズ…

ガルシン短編集

ガルシン『紅い花 他四篇』神西清訳(1937年初版/岩波文庫)こんにちは。今日は、ロシアの作家フセーヴォロド・ガルシン(1855-1888)の短編集を紹介します。精神的病に侵され若干33歳という若さで狂死したガルシンは、その短い生涯の中で20篇の作品を残しました…

うたかたの日々

ボリス・ヴィアン『うたかたの日々』伊東守男訳(2002年,早川書房) 儚いものは、美しい。古くからあらゆる文学や芸術において考えられてきたこの概念が、純粋で透明な一編の物語として見事なまでに昇華された作品。それが、ボリス・ヴィアンの『うたかたの日…

マザーグースのうたがきこえる

【BOOK REVIEW】 ニコラ・ベーリー『マザーグースのうたがきこえる』由良君美訳(1978年/ほるぷ出版)こんにちは。ずいぶんと寒くなってきましたね。通り抜ける風の匂いに本格的な秋の訪れを感じます。今日ご紹介するのは、イギリスの女流画家ニコラ・ベーリー…

シュルレアリスム宣言

【BOOK REVIEW】 アンドレ・ブルトン『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』巌谷國士訳(1992年/岩波書店)ブルトンは言います。“きっぱりいいきろう、不可思議はつねに美しい、どのような不可思議も美しい、それどころか不可思議のほかに美しいものはない。”20世…

ちょうどよい、距離。

工藤直子文/長新太絵『ともだちは海のにおい』(1984年,理論社) 人と人の間のちょうどよい距離っていうのは、こういうことだな。『ともだちは海のにおい』を読んでいると、そんなことを思います。運動が得意ないるかと、ビールと読書が好きなくじら。ふたりは…

七尾旅人の音楽

【MUSIC REVIEW】 七尾旅人『ひきがたり・ものがたりvol.1 蜂雀(ハミングバード)』,2003年今日は、鬼才の日本人アーティスト七尾旅人をご紹介します。1979年生まれの若い歌手で発表作品もそれほど多くはありませんが、その斬新な音楽世界は既に多くのアーテ…

美しいものはただそれだけで用を為しているから(前編)

ふだん、国内外の実にたくさんのアートブックや作品集を見る(「たくさん」とは、たとえば週に1000冊くらいです、おおよそ)なかで、すぐれたアート作品とそうではない作品がどう違うのか、そもそも「アート固有の領域」というものがあるとすれば、それはデ…

カレル・チャペック童話集

カレル・チャペック/中野好夫訳『長い長いお医者さんの話-チャペック童話集-』(1952年、岩波書店)こんにちは。本日はチェコの文豪カレル・チャペックの童話集をご紹介します。チャペックは大人のための文学や評論でも名高い作家ですが、とりわけ児童文学に…

魅惑の計算系動物、猫。

【BOOK REVIEW】 ポール・ギャリコ『猫語の教科書』(1995年,筑摩書房) 先日、書店にてとても面白い本に出会いました。その名も『猫語の教科書』。この本の執筆者は、なんと猫!言わば、猫による、猫のための人生(猫生?)啓発本です。編集を担当したのは…

Rocking Chair Girl

笹倉慎介『Rocking Chair Girl』,2008年 こんにちは。今日ご紹介するのは笹倉慎介というミュージシャンです。現在27歳の彼は、大学卒業後サラリーマンや珈琲屋店員を経験し、去年からは埼玉県入間市の米軍ハウスで音楽活動を続けています。入間に引っ越した…

加古里子さんの絵本

【BOOK REVIEW】 加古里子『かわ』(1962年/福音館書店) こんにちは。絵本大好きのななせから、おなじみ絵本レビューをお届けします。『かわ』は、日本の科学絵本の巨匠とも言うべき絵本作家、加古里子(かこさとし)さんの40歳のときの作品です。著名な絵本作…

絵本溺愛

【ACCORDING TO STAFF】本日は、スタッフをご紹介します。ポップアップ絵本を手に嬉しそうなのは、当ブログ執筆でおなじみのななせ。弊社では最年少ながら、国際情勢や政治の知識はダントツ。今朝も日刊新聞を手に事務所に駆け込んできました。そん感じのな…

Buena Vista Social Club

【MUSIC REVIEW】 Buena Vista Social Club『Buena Vista Social Club』,1997年 こんにちは。季節は夏を向かえ、事務所中に活力が溢れる今日この頃です。さて、今日は暑い季節にぴったりな『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』をご紹介します。“ブエナ・ビ…

Elliott Smith

【MUSIC REVIEW】 Elliott Smith『Figure8』,2000年。 こんにちは。暑い日が続きますね。いよいよ本格的な夏の訪れのようです。さて、今日ご紹介するのはアメリカのシンガーソングライター、エリオット・スミス。囁くような柔らかな歌声、繊細で優しい旋律。…